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一日8000歩以上歩くと全死亡率が低くなるかも!【観察研究】

身体活動を増加させることは、病気の予防や、身体や心の問題の改善に繋がることがはっきりとわかっています。

身体活動のうち、「歩くこと」は最も取り組みやすく、かつとっても有効な病気予防法な訳です。

それで、「どのくらい歩けば良いの?」に対しては、よく「1日1万歩!」みたいに言われますよね。しかし、実はこれは十分な根拠のある数字ではなかったようです。

今回紹介する観察研究は、2020年にJAMA(世界5大医学雑誌)に載った論文で、「1日8000歩以上歩いている人は死亡率が下がっていた。」という結論になっていて参考になりました。

1日1万歩?

日本では、歩数計のことを「万歩計」というように、「健康のためには1日1万歩!」ということが推奨されていますよね。これは何も日本だけのことではなく、世界中で広まっているようです。

しかし、実は1万歩が有効であるという科学的根拠は弱く、特に、本当に死亡率を改善させるかという検討は不十分であった訳です。

具体的に、厚労省の「健康日本21(身体活動・運動)」では、1日1万歩の根拠として、1986年にNEJM(これも世界5大医学雑誌)に発表された論文を引用しています。

曰く、16936人(35〜74歳)を1962〜1978年まで観察した結果、「エネルギー消費が週2000kcal未満の週2000kcal以上に対する総死亡率は1.31倍であった」

これより、週2000kcal(1日当たり300kcal)以上になるために必要な歩数を計算したら、1日1万歩だったそうです。→ 1万歩 ≒ 300kcal(体重60kgで通常スピード・通常歩幅の歩行として計算)

つまり、1日のエネルギー消費が根拠で、歩数は間接的に計算したものだったのですね。歩数は直接測定していないので根拠が弱いのですね。

ちなみに、健康効果に対して科学的根拠のある活動量は、

  • 中強度の運動を、少なくとも週150分〜300分
  • 高強度の運動なら、少なくとも週75分〜150分

とされています(→病気の予防に週150分以上身体を動かそう!)。

ただ、「どのくらい活動できたか」を測定するのは難しいんですね。その点、歩数計は活動量として「歩数」を用いることができるので、活動量の確認がしやすいんですね。ゴールとして「1万歩」というのを、とりあえず設定しといたってのも、まあ理解できますね。

1日8000歩以上でOK!

この研究では、40歳以上のアメリカ人(平均年齢56.8歳)計4840名を対象に、7日間歩数計を装着してもらって歩数と歩行強度の計測を行なっています。

計測は2003〜2006年に行い、2015年に参加者の全死亡率と死因を確かめました。初めの計測から10年間追跡したんですね!

結果として

  • 4000歩以下:1000人あたり年間76.7人死亡
  • 4000〜7999歩:1,000人あたり年間21.4人死亡
  • 8000〜11999歩:1000人あたり年間6.9人死亡
  • 12000歩以上:1000人あたり年間4.8人死亡

となったそうです。それで、

  • 4000歩よりも8000歩の方が、全死亡率が51%減少していた(ハザード比0.49)
  • 4000歩よりも12000歩の方が、全死亡率が65%減少していた(ハザード比0.35)

と推定されるそうです。

死因第1位は循環器疾患(心疾患など)、第2位はガンでして、共に歩数が多いほど死亡率が低くなっています。

逆に、1日何歩だとヤバイ?

これについては、研究者たちは名言していませんが、1日に2000歩だと全死亡率が4000歩よりも有意に増加するようですので、よくない感じですね。

「歩数」と「歩行強度」どっちが重要?

歩行スピードが速い人ほど死亡率が低いことははっきりしています。しかし、加速度計で測定される歩行強度(ケイデンス:歩行ピッチのこと)は死亡率に関係するかどうかは明らかになっていなかったのです。

今回の研究では、歩行強度と死亡率については、1日の歩数で調整すると「関係ない」という結果になったようです。

たくさん歩く人は歩行強度(ケイデンス)も高いってことですね。

ということで、1日の歩数さえ気にしていれば、早く歩こうが遅く歩こうがどちらでも良いということになりそうですね。

歩数をどうやって測る?

最近はスマホのアプリで歩数計測ができるようになっていますね。これで良いと思います。

しかし、歩数計測は、使用する機器によって、大体20%かそれ以上のズレが生じてしまうようです。つまり、歩数計で「8000」と表示されていても、実際は6500歩(過小計測された)かもしれないし、9500歩(過大計測された)かもしれないと。

うーん、ということは「1日1万歩」を目標にしておけば、少なくとも8000歩は歩くことになるので、結構良い指標と言えるかもしれませんね。

いずれにしても、毎日の歩数をチェックしていくこと自体に身体活動を増加させる効果がありますので、ぜひ歩数計測していただければと思います。

まとめ

この研究は観察研究ですので、1日8000歩以上の歩数と全死亡率との因果関係が完全に証明された訳ではありません。

でも、歩数カウントがスマホで簡単にできる昨今、ある程度科学的根拠のある1日の歩数が明らかになったことは喜ばしいですね。