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「効果のある理学療法」に本気なら、「心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス」を読もう!

患者が良くなる=効果がある

もちろん上記で間違ってはいません。しかし、「患者が良くなったことが、本当にその介入の効果と言えるのか」を理解するためには、割と「介入効果」について深く理解する必要があります。つまり、「介入以外の(見せかけの)効果」についてきちんと理解をしている必要があるのです。

先輩セラピスト

〜介入〜

ほら!良くなったでしょ!

後輩セラピスト

あ、ほんとだ。でもそれって、本当にその介入の効果なのかな・・?

そして、この「介入効果」について、「確かにその介入には効果があります!」というお墨付きがあるものが「エビデンス(根拠)に基づく介入:EBP」とか言われています。

エビデンスを踏まえた治療を行うことが推奨されて久しい理学療法の現場。しかし、まだまだエビデンスに基づく理学療法(EBPT)は十分に行われていない所も多いのではないでしょうか。かく言う私も、十分なEBPTができているとは言えません。我々理学療法士は、公的保険で賄われる介入を行う立場である以上、患者さんに対する真に効果のある介入を行う必要があります。

今回、「パレオな男」で紹介されていた本、「心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス」が、上記内容の深い理解をする上でとても良かったので、簡単にレビューします!

読んでほしいヒト
  • EBM、EBPTという用語は知っているけど、あまり深くは知らない
  • 先輩から指導された介入内容に疑いの目をもってしまう
  • 「治療介入の効果」にストイックな方だ

どうすれば「効果がある理学療法」ができるのかな〜

自分のやっていることが本当に合っているのか不安・・

結論:「効果がある介入」を知るためにエビデンスを学ぼう!

この本には、「エビデンスとは何か」「なぜエビデンスが重要か」「どのようにエビデンスを探せば良いか」が、難しくない言葉で詳しく書いてあります。

もしあなたがこれらについて「何となく分かった気になっている」だけなら、是非本書を読んでください!本書の内容を理解して実践することができれば、自信を持って患者さんの治療に当たることが出来るようになりますよ!

本書は心理職のために書かれた本ですが、その内容は十二分に理学療法士職にも生かすことができます。

著者紹介

著者は原田隆之氏で、筑波大学心理学域の教授で、カルフォルニア州立大学の大学院修士課程を修了し、法務省の法務専門官として働いた経歴を持っています。

特に、司法臨床で「治療効果」がシビアに求められた経験から、必然的に「エビデンスに基づく実践:EBP」に詳しくなったそうです。

海外留学していたことも、EBPに興味を持つきっかけになっていそうですね。

作品背景

心理職では未だに「エビデンス」「EBP」に違和感や嫌悪感がある人が多いそうです。

丹野(2001)は・・・日本の臨床心理学はサイエンスの部分を欠き、アートの部分に偏りすぎているため、これでは宗教や呪術との区別がつかないと述べる。

「日本の心理臨床は海外に比べて遅れている」

これに危機感を持った著者が、「これらエビデンスへの違和感や嫌悪感が、初歩的な誤解や無知に基づくことを正したい。」という思いを持って書かれた本です。

つまり、著者の「思い」がこもった、熱くかつ分かりやすい本です!

本書の構成

根拠に基づく医療:EBM(EBP)の実践に関する理解を深めることを目的に、エビデンスを「まなぶ」、「つくる」、「つかう」と順を追って、初心者にも分かりやすい解説がなされています。

エビデンスを臨床に活かすといっても、優れたエビエンスにどのようにアクセスするのか、優れたエビデンスとそうでないエビデンスをどのように見分けるのか、どのようにして知識をアップデートするのか・・・それには多くのノウハウが必要である。

上記を正しく行えるようになることを目的に、「すでに臨床に活かしている人や、研究に関心を持っている人にも役立つ内容を盛り込んで」いる。

印象的だった内容

「あなたはなぜその療法・技法を用いて治療を行うのですか?」

本書の初めで著者はこう問いかけています。そして、「好きだから」「勉強をしてきたから」「所属施設で行っているから」と答えるなら、それは無責任であると述べています。

私も同感です。しかし、セラピストの中には「なんとなく」上記の理由で治療方法を選択している人も多いのではないでしょうか。私も良く分かります。自分で「考えたり判断したりする」には労力が必要だからです。

一方、「効果があるから」と答える人も多いと思います。

しかし、その場合は「それは真の効果か(見かけの効果ではないのか)」という疑問に答えられなければなりません。

EBPとは介入に効果があるかどうかを客観的に見極めたうえで、治療法の選択をする臨床をいうのであり、しかもその「効果」は「見かけの効果」を排した「真の効果」でなければならないのである。

つまり、「真の効果とは何か」について深く理解するためには、「見かけの効果」について深く理解する必要があるんです。

そして、こういうことを頑張ってやっているのが臨床研究なんですね。

だから、「真の介入効果」について知りたいなら、著者も強調しているように、臨床研究について深く知らなければならないんです。

見かけの効果とは

「見かけの効果」として理解しておきたいのは、「プラセボ効果」と「バイアス」です。

  • プラセボ効果:「期待」による効果のこと。暗示や自己治癒力が関与しているとされているが、その原因は明らかになっていない。
  • バイアス:偏見、先入観のこと。

特に、臨床研究では「プラセボ効果」以上の効果があることを示すことと、「バイアス」を排除することに労力を費やします。

本書を読むと、これについての理解が深まります。

例えば、以下についてご存知でしょうか。

・共介入:意図した介入以外に他の介入がある p28

・平均への回帰:誤差によって数値が見かけ上の変動をした p28

・確証バイアス:自分がすでに有している信念を補強するデータだけを意識的あるいは無意識的に選り好みする傾向 p38

・記憶バイアス:記憶が都合の良いようにゆがんでしまうp38

・関連性の錯誤:ある目立ったことが2つ前後して生じると、それらに誤った因果関係を想定してしまう p38

・選択バイアス:研究に参加した人が治療意欲が高く、症状も軽い患者が多かったかもしれない p89

・ホーソン効果:「自分たちは観察されている」という(患者)本人の認知によって、パフォーマンスが向上すること p89

・公表バイアス:「効果あり」の研究ばかり公表されており、「効果なし=ネガティブ試験」の研究が公表されない p130

上記は一部ですが、「真の効果」をゆがめるものです。本書を読んでよく理解しましょう!

「エビデンスがある」はどういう場合に言えるか

データさえ用いていれば何でもエビデンスになるわけではなく、実はエビデンスには厳然とした「質のランク」が存在する。

この、エビデンスのランクは6段階あります。

レベル1 RCTの系統的レビュー(メタアナリシス)

レベル2 個々のRCT

レベル3 準実験

レベル4 観察研究(コホート研究、ケース・コントロール研究)

レベル5 事例集積研究

レベル6 専門家の意見(研究データの批判的吟味を欠いたもの)

「EBMでエビデンスというときは、レベル1または2を指す」とのことです。

皆さんは、「先輩の経験に基づく意見」を鵜呑みにしていませんか?その態度は、人間関係構築のためには有効かもしれません。しかし、その「意見」は上記のような様々なバイアスによってゆがめられている可能性が高いのです。

以下の記載が私の心に刺さりました。

Brown(2001)は、「忠誠は、宗教においては徳である。しかし、科学においては罪なのだ」と述べているが、まさにその通りである。科学的態度は「疑うこと」から始まるのに対し、それをしないで盲信する態度は宗教よりカルトに近い。

「科学」についての印象的な記載

科学は、「人間は間違うものである」という謙虚な前提に立ち、その間違いをできる限り排除するために、さまざまな工夫を凝らして事実に近づこうとする営みである。

科学は完全ではないが、そのことが、それより劣る手段(直感や主観的観察など)を用いることの根拠にならないのは明白である。

どうでしょう。理学療法士として現場に従事している私に響きました。現状を憂うものとして。熱い気持ちになりました。

文献検索の方法

上記までの記載は、「エビデンスをまなぶ」の内容がほとんどです。本書には、「エビデンスをつかう」の章に詳細なノウハウが記載されていて、とても有用です。

エビデンスをつかう際には、以下の4つのステップが必要である(古川、2000;正木・津谷、2006)。

①臨床疑問を定式化する(PICO)

②それに答えることのできるエビデンスを検索する

③エビデンスを吟味する

④当のクライエントにエビデンスを適用する

ここで、われわれが第一に検討すべきエビデンス源は、RCTの系統的レビューであり、それがないのならば、個々のRCT論文を読むというのが鉄則である。

PICOとは「①どのような患者に(Patient),②どのような評価・治療をしたら(Intervention),③何と比較して(Comparison),④どのような結果になるか(Outcome)?」(日本理学療法士学会)です。

まず、臨床疑問はPICOで定式化しておきましょう!(どのような介入に効果があるかわからないときはPIだけでも良い)

次に、検索→吟味を行いますが、ここにノウハウやコツが必要なのですね。

その具体的方法については、是非、本書を読んで学んでみてください!

まとめ:「見かけの効果の罠に気づかない」予防に本書を読もう!

私は、この本を読んで「臨床場面でのモヤモヤ」を解決できる方法を学べました!結局は自分で調べて学んでいくしかないのですね。本書でその意義や具体的ノウハウが学べたことは、本当に大きかったと感じています!

是非、皆さんも読んでみてください!自らの理学療法介入を「真に効果のある」内容に近づけましょう!