大学院

退院後に転倒予防のための「運動」を継続すると、逆に転倒を増やしてしまう件

予防分野に興味深々なわたくし。転倒予防について色々調べていて、特にビックリした論文を紹介します。

調べる前は、「転倒予防には運動を続けることが大事〜」と漠然と思っていました。しかし、「退院後の患者さんには当てはまらない!」という結果の論文を見つけてビックリしました。

これは、シドニー大学のSherrington博士の研究(2014年)で、病院から退院したばかりの患者340人(平均年齢81.2歳)を、自宅トレーニング群と通常群に分けて1年間の転倒回数を調べたものです。すると、こんな結果になりました。

  • 1年間の総転倒回数は、トレーニング群177回で、通常群123回よりも多かった!
  • 転んだ人もトレーニング群の方が多かった!
  • 身体パフォーマンス(下肢機能を主とした)はトレーニング群で有為に高くなった!

つまり、「退院後に運動を継続すれば身体パフォーマンスは向上するけど、よく転ぶようになった」という結果だったのです。

なぜ「運動を継続することによって転倒が増えてしまったのか」について、研究チームでは、

  1. 運動によって、疲れたり筋肉痛がでたりしたからかも
  2. 運動によって、動くことに自信がついて活動性が上がったからかも
  3. 運動を継続できない人がいたことが、何かしら悪い影響を及ぼしたのかも
  4. 転んだ時期と身体パフォーマンスが向上した時期が異なるからかも
  5. トレーニング群の方が転倒に対する意識が高くなって、転倒回数を多く記載したのかも
  6. 偶然

のようなことを挙げております。

さらに、サブグループ解析では、「ベースラインよりも歩行速度や身体パフォーマンスが改善したグループで転倒が多かった」そうです。

結論として

今回の結果から、今回のような症例群(転倒ハイリスク群)に対する、転倒予防介入としての自宅トレーニングは推奨できない。

と述べております。そのうえで。

今後の研究では、転倒に対する多因子介入の有効性の検証が必要である。

と展望を述べています。

いやあ、参りました。我々理学療法士はまさに「転倒ハイリスク群」を対象とした介入を行っているわけです。

運動指導のみでは、逆に転倒リスクを増大させてしまうかもしれないことを胸に、転倒予防に効果的な介入を探しつつ、これからの臨床に当たりたいと思った次第です。

論文→A post-hospital home exercise program improved mobility but increased falls in older people: a randomised controlled trial